ワタナベ メイ -playing ground-
■展覧会コメント
デジタル技術や情報ネットワークの発展により、ディスプレイに表示されるデジタルデータを通してものを見る機会が増えました。スマートフォンで写真を撮ってSNSに投稿し人と共有したり、ビデオ通話で会話をしたりすることを「オンラインで会う」と表現するように、ものを見ることや人に会うという体験は、デジタルデータとして非物質化しているように感じます。非物質化した体験では、直接対面したり手で触れたりしてものや人の存在を確かめることはできません。しかし、ディスプレイ越しにその存在を確かに感じることができます。では、デジタルデータのように非物質で実体の「ない」ものが、現実に「ある」と思えるのはどういうことなのでしょうか。また、その「ない」ものが「ある」ように感じられる光景とは、どのようなものなのでしょうか。
私は、3次元のコンピューターグラフィックス(3DCG)を用いて作成したデジタル上の仮想空間を題材に、銅版画やシルクスクリーンなどの版画技法を用いた作品制作を行っています。3DCG内に構築された空間には、人型の物体や家具、植物、置物など、さまざまな要素が配置されています。それら非物質的な「ない」ものを並び替えて作られる空間は、デジタル上の仮想的な存在でありながら、私にとっては確かに「ある」空間です。このように仮想空間を構築することは、積み木を組み立ててさまざまなものを作る遊びに似ていると感じます。今回の展示では、その仮想的な遊び場を題材にした作品を制作することで、「ない」ものが「ある」光景について考えています。